
2026.01.19

日本の物流業界は、2024年問題に象徴されるドライバー不足と労働規制の強化により、大きな転換期を迎えています。
これは運送会社だけでなく、運送を依頼する荷主企業にも「公正で透明な取引」と「法令遵守」を強く求める流れです。
特に、下請法(下請代金支払遅延等防止法)、物流業界特有の慣行を是正する物流特殊指定、そして運送申込書/運送引受書の記載義務化は、荷主側の責任とリスクを大きく変えました。
本コラムでは、これらの制度の違いと改正ポイントを整理しつつ、荷主企業が今すぐ見直すべき「運送委託の3つのポイント」を解説します。
物流業界では、元請け→下請け→孫請け…と続く多重下請け構造の中で、末端の運送事業者(軽貨物ドライバーなど)に不当に低い運賃や過大な負担が押し付けられてきました。
これを是正する代表的な仕組みが次の2つです。
●下請法(下請代金支払遅延等防止法)
親事業者が優越的地位を利用して、下請事業者に不利な条件を押し付けることを防ぐ法律。
代金支払の遅延・減額、買いたたき、一方的な返品・やり直しなどを禁止し、公正な取引を守ります。
●物流特殊指定(物流分野の独禁法特別指定)
公正取引委員会が独占禁止法に基づき、物流・運送分野に特有の不公正な行為を列挙したもの。
荷待ち時間の押し付け、附帯作業の無償要求、不当に低い運賃などを規制します。
どちらも共通して、「荷主(発注側)」と「運送事業者(受託側)」の力関係の歪みを正し、公正な取引環境をつくることが目的です。

(参考:公正取引委員会「物流特殊指定 ~知っておきたい「物流分野の取引ルール」~」)
◎下請法
対象:製造・IT・物流など幅広い「親事業者 vs 下請事業者」
中心テーマ:代金支払、単価、返品などお金と契約条件の不公正
(参考:公正取引委員会「下請法の概要」)
◎物流特殊指定
対象:物流・運送分野に特化
中心テーマ:荷待ち、附帯作業、運行条件など現場の具体的行為
(参考:国土交通省「物流特殊指定の概要」)
さらに、2026年1月には下請法が「中小受託取引適正化法」に改正され、フリーランスを含む幅広い受託者を守る枠組みに拡大される方向で議論が進んでおり、物流への影響も大きいとされています。
2024年(令和6年)の物流関連法制の改正は、荷主企業に具体的な事務手続きと責任の明確化を求め、法令を遵守しない場合のリスクを大幅に増加させました。
2024年4月からのトラックドライバーの時間外労働時間の上限規制施行(2024年問題)により、物流の停滞が懸念されています。
この変化の中、ドライバーの長時間労働や過積載などの法令違反の原因が荷主側にあると判断された場合、「荷主勧告制度」に基づき、国土交通大臣からの勧告・公表が行われるリスクがあります。
これは企業の信頼性を大きく損ないます。(参考:国土交通省「荷主勧告制度の改正について」)
標準貨物自動車運送約款を含む標準運送約款の改正により、物流取引において、運送申込書と運送引受書に指定された項目を明記し、相互に交付することが義務化されました。
運送申込書には、特に以下のような情報を明確に記載することが重要です。
●運賃・料金(基本運賃と各種料金)
●附帯作業(荷役・検品・仕分けなど)の内容と対価
●積み込み・荷卸し条件
●時間指定・納品リードタイム
●再委託の可否・条件
(参考:国土交通省「標準運送約款」)
運送申込書/運送引受書の書面化・分離記載が徹底されることで、運賃と附帯作業が「ごちゃまぜ」の状態から、透明で説明可能な契約関係へと変わることが期待されています。
運送現場では、ドライバーが荷物の受け渡し以外の附帯作業(荷待ち、積み込み・積み下ろし、倉庫内の仕分けなど)に多くの時間を費やしているのが現状です。
改正後は、こうした運送以外の業務(附帯業務)を切り分けて記載し、料金を設定することが求められています。
●荷待ち時間:一定時間を超えれば待機料として有償化
●荷役作業:運送とは別の附帯作業料として明示
●倉庫内作業:倉庫業務として別途契約
荷主企業が、ドライバーに無償での附帯作業を当然視したままでは、物流特殊指定や独占禁止法上の問題に発展するリスクがあります。
(参考:全日本トラック協会「標準運送約款・改正貨物自動車運送事業法の解説」)
①取引条件の「書面化」と「分離記載」を徹底する
まずは、運送申込書・運送引受書の徹底活用です。
●運賃・料金の明確化
運送の対価である運賃と、附帯業務の料金を別項目として記載します。
●附帯業務の定義と対価
荷役、待機時間、検品、仕分けなど、運送以外の業務を具体的に定義し、それに対する適切な料金を支払うことを明示します。
「そこまで書かなくても、これまでの慣例で…」というスタンスは、今後はコンプライアンス上のリスクになり得ます。(参考:国土交通省「改正貨物自動車運送事業法について」)
②長時間拘束・過積載を前提にしない運行設計
ドライバーに過度な負担を強いる取引慣行を見直し、健全な運行を担保することも欠かせません。
●荷待ち時間の削減
荷主都合によるドライバーの長時間待機は、長時間労働の大きな要因です。トラック予約受付システムの導入や、集荷・納品時間の事前調整により、荷待ち時間の削減に取り組むことが求められます。
(参考:全日本トラック協会「トラック予約受付システム」)
●過積載の要求排除
過積載は重大事故につながるだけでなく、違反時にはドライバーだけでなく事業者・荷主側にも責任が及ぶ可能性があります。軽貨物運送でも、最大積載量を守り、安全運行を徹底することが不可欠です。
③透明性の高い運送体制(軽貨物含む)を確保
軽貨物運送は小回り・コスト面で優れますが、多くが業務委託の個人ドライバーであるため、元請けの管理レベルが品質とリスクを左右します。
●実運送体制管理簿などで、誰がどの車両で運んでいるかを把握しているか
●黒ナンバー登録・各種保険・安全教育など、基本的な法令対応ができているか
●再委託の可否や条件を、あいまいにしていないか
2025年以降は、実運送体制管理簿の作成・保存が求められる方向性が明確になっており、多重下請けの是正と透明性が一段と重要になります。(参考:国土交通省「実運送体制管理簿の作成・ 情報通知の義務化」)
法令遵守意識の低い運送事業者と取引を続けることは、荷主企業自身の経営を危うくします。
①不適切な取引が荷主にもたらす直接的な行政指導リスク
運送業者側の長時間労働や過積載が、荷主側の不当な依頼(短納期、長時間待機など)によって引き起こされたと判断された場合、荷主は荷主勧告制度の対象となり、行政指導や企業名の公表を受ける可能性があります。
これは、企業の社会的な信頼(ガバナンス)に大きな打撃を与えます。
②グレーな委託構造がもたらす品質と安全性の問題
実運送体制の管理が不十分な軽貨物事業者と取引すると、ドライバーの黒ナンバー登録の有無や、車両の整備状況が不透明になりがちです。
特に軽貨物運送は、小口・緊急配送などで荷主の顔となる重要な役割を担うため、品質のバラつきは顧客満足度を大きく低下させます。
③ 事故時の責任の曖昧化
適切な体制管理(実運送人、車両、保険)が行われていない業者と取引した場合、万が一、配送中に事故や荷物破損が発生しても、責任の所在や保険の適用範囲が曖昧になり、対応が遅れるリスクがあります。
荷主企業は、事故対応にかかる時間的・金銭的コストを間接的に負担することになりかねません。
名古屋を中心に全国ネットワークを展開するエヌドライブカーゴは
●運行体制の一元管理とプロドライバー教育
●スポット便・定期便を組み合わせたコスト最適化
●運送申込書を前提とした、運送と附帯作業の明確な切り分け
といった取り組みで、荷主企業のコンプライアンスリスクと物流コストの両方の最適化を支援しています。
物流特殊指定の改正と運送申込書の義務化は、荷主企業に対し、「公正な取引」と「透明性の確保」を厳しく求め、物流リスクを企業の経営リスクとして認識することを促しています。
軽貨物運送を単なる「安い運送手段」としてではなく、コンプライアンス体制が整った「戦略的パートナーシップ」として活用することで、荷主企業は、法令遵守と同時に、コストの最適化(固定費の変動費化)や業務効率の向上、そして顧客満足度の向上といった多大なメリットを享受できます。
運送申込書への「分離記載」附帯作業の明確化など、新たな法令要件に対応し、健全な取引を続けることが、2024年以降も企業が持続的に成長するための絶対条件です。
エヌドライブカーゴは、高い透明性と柔軟な軽貨物サービスで、貴社のビジネスを強力にサポートします。
実運送体制管理簿は、運送会社の「信頼の証」です。軽貨物運送の柔軟性とコスト効率を最大限に活かしつつ、コンプライアンスリスクを回避するためには、透明性の高い管理体制を持つパートナーを選ぶことが不可欠です。
まずはお気軽にご相談ください。
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